逆転の発想でチャレンジ
渡辺英世社長 小諸市は、浅間山の斜面が拡がり、中央部を千曲川が流れる。市のキャッチフレーズは「高原に育む活力ある詩情公園都市」である。 ちくま市出身の渡辺作意氏が、大正10年、小海線の分岐路である当地で肥料商を始めたのが始まりである。多木肥料(現・多木化学株)の特約店として単肥を中心に扱っていた。 戦後の昭和20年、一郎氏が二代社長に就任、36年に法人化、30年代後半から農機具を扱うようになった。 英世氏(59歳)は、長野トヨタ産業車両部でフォークリフトの営業に32年間携わっていたが、昭和55年、長女の一美さんと結婚して婿養子となり入社し、平成14年、三代社長に就任した。 テリトリーとしては、東信地方と言われる小諸市、立科町、佐久市、東御市、軽井沢町、御代田町で、農業事情としては、米(コシヒカリが主体、特A地帯)、高原野菜(レタス、白菜、キャベツ)、果樹(りんご、桃)などである。 顧客数は2500戸で、耕地面積については大は30ヘクタール、小は10アール、平均すると40〜70アールである。中堅より小さな農家が主体であるが、米を扱うようになってから大規模農家が増えてきた。専業割合は5割である。
株式会社渡邊作意商店本社 本社の敷地面積は660平方メートルで事務所とショールームがある。このほか4カ所に中型整備施設500平方メートル、製品倉庫1200平方メートル、中古展示場500平方メートル、中古車置き場、駐車場2000平方メートルを所有している。 社長を除く従業員は男8人、女3人の計11人で、職種別では事務4人、セールスサービス4人、整備3人である。 農業機械整備技能士の資格者は、1級4人、2級2人となっている。 取り扱い銘柄はトラクターとティラー、コンバインがヰセキとヤンマー、耕うん機、田植機、バインダー、籾すり機がヰセキ、防除機が丸山と共立、乾燥機が金子などとなっている。 最近年次(19年12月期)の決算についてみると、農業機械3億8700万円、肥料5000万円、米4300万円、合計4億8000万円の前年並みで、整備部門割合は6%となっている。 使用済み農業機械の処理については、市内の処理業者に依頼している。現在は鉄の価格が高いので特に問題はない。
整備工場(奥はジョンディア製120馬力トラクター) 経営理念についてお尋ねすると、創業87年を迎えられたのも、地域にとけ込み、アフターサービスで深いお付き合いをして、信頼、信用を大切にしてきたからである。常に、社員がお客様の立場を考えて、身近で気軽な店作りを目指しており、「ワタサク」の名称で親しまれている。 店構えは大変古いが、保守的な土地柄で、お客様が来店しやすくするため改装しない。以前は盆暮れにしか請求出来なかったが、現在では2カ月に1度の年金支給日に合わせ請求書を発行している。 企業経営の特色であるが、逆転の発想で、思い込み、過去のこだわりなどにとらわれず、失敗を恐れずにチャレンジし、変革を求めている。 社員に、原価意識、1日、1カ月運営のためのコストを提示し、目標を設定して、前年比をクリア出来るよう意識付けしている。社長の「チャレンジ精神」「コスト意識」は、トヨタに在籍した影響である。 農家の高齢化は当然であるので、高齢化市場を掘り起こすことが大切である。年式の古い農機具が多いため、安全、操作性が簡単、軽いを重点にして、展示会、試乗会、整備会などを各地で開催し、お客様との距離を縮める販促に努めている。 農家も、規模が拡大すれば、将来の不安、迷いなど悩み事を抱えるので、共に考え行動出来る体制作りが必要である。 当社では、大規模農家を対象に、勉強会、セミナーを各地で年3回開催し、情報交換を行っている。2月26日に、八十二銀行の協賛を得て、小諸グランドホテルにおいて、第1回ワタサク講演会を開催した。信州大学経営大学院教授、茂木信太郎氏が「お米の未来 売れるお米 売れないお米」と題し講演したあと、八十二銀行から各種融資制度の説明があった。五50人の募集を大きく上回る88人が参加するなど農家の関心も高い。 社長は、面白く仕事をするか、面白い仕事をするかが、社員のやる気、工夫、提案に結びつく。最近は、お客様が、友人、知人を紹介してくれるケースが増えている。 また、ラジオCM(信越放送、月8回、20秒スポット)や地域新聞(小諸新聞、佐久平新聞、週間佐久平)への広告掲載を積極的に行っている。
ショールーム 今年の状況については、農業機械の値上げ前の駆け込み需要があり、トラクター、コンバイン、田植機とも好調で、特に大型機械が売れ、前年比102〜103%である。 次に、農政に対する意見をお伺いしたところ、地域的に耕地面積が狭い中、高齢化が避けられないことから、集落営農化につながるものの簡単には進まない。 平成17年から、請負作業を行っている。現在40アールで利益は出ないが派生効果がある。丁寧に作業することを心掛け、年々面積が増えている。人の問題や元気のいい農家を対象にした仕組み作りなど方向性を示したい。 今後は、農家も、より経営感覚を身に付ける必要がある。 平成17年から米を扱い始め、昨年、農水省の農産物検査機関として登録したので、販売面でも協力体制が確立しつつある。 最後に、今後の予測についてお聞きすると、これからは農家だけでなく農業参入の企業等とお付き合い出来る体制作りが必要である。農業は、第一次産業ゆえに、機械の販売、修理はもとより、その先にあることを考えると、販売面での役割が大切である。 先日、GAP(農業生産工程管理)研究会に参加したが、将来、農家と一緒にGAP農場を作りたい。農家の意欲を引き出し、常に感謝の気持ちを忘れず共に歩む。そのために、幅広く情報を集め、出来る限り勉強する。 変革の時期を迎え、都市銀行、地方銀行が農業に目を向けている。農工商連携の中に県商協の参加が求められている。