農業機械ってなーに?
1.農業機械の進歩
歩く機械から乗る機械へ
農業機械は、農作業に使用される機械を指しますが、一般的に耕うん機、トラクタ、田植機、コンバインなど稲作りをする機械を思い浮かべるのではないでしょうか。
これらの機械の違いは、農家の方には簡単なことかと思いますが、まだまだ、沢山の便利な機械がありますし、同じような機械でも地域や気候、風土ならびに農業形態によって種類や構造も異なってきます。
わが国の農業は、戦後しばらくまで、人力、牛馬力で行われるのがあたりまえでした。そのような時代でも、脱穀や治水用の発動機、田畑を耕す際のスキなどは、生産向上のために様々な改良が行われてきました。
本格的な農業機械化は、戦後、稲作関連の機械を中心に発展し、昭和30年前後から耕うん機、防除機と機械化が進展しました。昭和40年代から田植機やコンバイン、さらに乗用トラクタが普及し、「歩く機械から乗る機械」へと、今日の稲作機械化一貫体系が確立されました。
農業機械化により10アール当たりの稲作労働時間は、昭和40年の141時間から平成16年には31時間にと大幅に軽減されています。
稲作以外の機械化も進められており、畑作、野菜、果樹や畜産などでも機械化が進み、労働力の軽減、労働時間の短縮、作物生産コストの低減など大いに期待されています。
さらに最近では、電子・油圧による自動化が進み、機械が適正な操作をアシストしてくれますので、女性の方や高齢者の方で機械操作が得意でないといった方でも簡単に農作業ができるようになっております。また、キャビン付きの機械では、運転席にエアコンやCD付き、座席のシートの座り心地も良く、自動車のような室内環境で快適性と安全性に配慮した魅力ある機械が続々できております。
2.農業機械が果たした役割
3K作業から解放
農業機械の利用により重労働から解放され、農業機械の適正な導入と利用によって、次のような効果が得られます。
(1)労働生産性の向上……「きつい」作業をなくし、作業を向上させます。
- 重労働作業を軽減させる。
- 作業精度(よい農作業)の向上が図れる。
- 作業能率(速い農作業)の向上が図れる。
- 雇用労働力の減少または不要となる。
- 農繁期の多忙さを少なくする。
- 余剰労働力を他部門で有効に活かせる。
(2)土地生産性の向上……生産物の品質をよくし、増収が図れる。
- 適期に作業ができる。
- よい農作業をムラなく行える。
- 適期適作ができる。
- 農地の高度利用ができる。
- 高度の栽培技術の導入が可能になる。
農業機械の適正な導入は、きつい労働を軽減するとともに増収・増益をもたらし、労働生産性と土地の生産性向上を高め、農業経営を著しく発展させます。 そのため、農業機械の導入利用に当たっては、認定農業者、集落営農等の担い手など基幹労働力と高齢者および婦人の労働力のそれぞれの利用者の事情に対応するとともに、導入目的に対してムダとムリがないようにすることが重要です。
3.いろいろな種類の農業機械
使用目的に合った農業機械を選びましょう。
農業機械は、「農機」または「農機具」などいわれており、農機具は少し古めかしいでしょうか? 年配の方には、農機具の方が親しみやすいかも知れませんね。 その機械の種類はきわめて多く、多種多様ですが、通常「農用原動機」と「農用作業機」に区分されます。
(1)農用原動機
- 電動機 (単相モータ、三相モータ)
- 内燃機関 (ガソリンエンジン【2サイクルエンジン、4サイクルエンジン】、ディーゼルエンジンなど)
農業機械は、この内燃機関を搭載した機械が多く、田植機、コンバインなどがあり、よく目にするのが、農用トラクタ(乗用トラクタ、歩行トラクタなど)かと思われます。農用トラクタに農用作業機を取り付けるといろいろの農作業ができ、トラクタは力強い原動機ともいえます。
電動機は、屋内設置の乾燥機、もみすり機などの動力源として幅広く使われています。
農用トラクタですが、歩行トラクタは、耕うん機(ロータリ駆動)と中耕管理機・ティラー・管理機(ロータ駆動やカルチベータ〈中耕・除草〉などの牽引)に大別されます。また、乗用トラクタは2輪駆動と4輪駆動にクローラ型(装軌形、半装軌形)があり、最近は、クローラ型も目にするようになりました。機械の大きさの分類はキロワット(以前は馬力)によって行われます。
(2)農用作業機
耕うん・整地から収穫・調製・加工に至までの各種作業を農業用原動機により牽引または駆動されて行うもので、その範囲と種類は極めて多く、その種類の分類は、作業用途によって大別されます。
1.耕うん整地作業用(乗用トラクタ、歩行トラクタ(耕うん機、ティラー、管理機)
A.耕起用(土壌を耕す作業機です)
○プラウ:
(はつ土板プラウ、ディスクプラウ、すき)トラクタのけん引力によりボトムが(犂体)が土にもぐり、土壌を連続して、耕起し、反転、破砕することから畑地、草地の更新に多く利用されております。
○ロータリ:耕うん軸に爪(普通爪、なた爪)が多数取り付けられており、作業幅が広く、能率が高く、作業表面が均平に仕上がるので水田、畑作の耕うん整地に広く使われています。
B.耕土改良用(土壌環境を改善〈排水、透水性、通気性を良くする〉作業機で乗用トラクタなどに取り付けて使用されます。)
○サブソイラ:チゼルプラウともいい35〜40㎝程度の深さに割れ目をいれる心土破砕機です。)
○パンブレーカ:サブソイラのチゼルにウイング(翼)を装着し、破砕効果を大きくした心土破砕機です。)
○ローラ:床締め用機械
C.整地用(耕起した後に砕土、整地する作業機で、乗用トラクタなどに取り付けて使用されます。)
○ディスクハロー:円板の回転により土の固まりを切断・破砕し、土壌表面を均平する作業機です。
○カルチパッカ:表面がソロバン玉状になっており、土壌を鎮圧する作業機です。
2.栽培管理作業用(肥料や除草剤などの散布に使用される機械で、乗用トラクタなどに取り付けて使用するか、自走式の専用機があります。)
A.施肥用(石灰や粒状肥料、堆肥などを散布する作業機です。)
○ブロードキャスタ:
トラクタに搭載し、石灰や粒状肥料、除草剤散布などに使用されます。
○マニュアスプレダ:堆肥などの散布に使用されます。
○尿散布機:家畜の糞尿などの液体をタンクに汲み上げ、運搬や散布を行う作業機です。
B.播種用(種子を蒔く作業機で乗用トラクタ、歩行用トラクタなどに取り付けて使用されます。)
○プランタ:一定間隔に種子を蒔く播種機です。
○ドリル:いろいろな種子を蒔く条播機です。
○水稲直播機:
種子を直接水田に蒔く播種機です。
C.移植用(稲や野菜の苗を植える作業機です。)
○田植機:育苗箱で育てたマット苗を植え付け爪で苗をつかみ、高速で田んぼに苗を植え付ける機械です。
○野菜移植機:野菜の苗、ポット苗などを畑に植え付ける機械です。
○たばこ移植機:たばこの苗を植える機械です。
D.作物管理用(作物を育てるための保温、雑草を除くための作業機です)
○マルチャ:土壌の保温、雑草の発芽防止のため農業用フイルムを掛ける作業機です。
○芝刈機:ゴルフ場や公園などの芝を刈る機械です。
○刈払機:雑草を刈り取る機械です。
E.土壌管理機(除草のほか、中耕・培土・畝立てで表土を柔らかくし、作物の根への通気や排水性を良くする作業機で、乗用トラクタ、歩行トラクタなどに取り付けて使用されます。)
○カルチベータ:畑作栽培で除草、中耕、培土などの作業機です。
○中耕ロータリ:中耕・除草・培土のほか、畝成形、土入れ及びマルチ作業が可能なものもあります。歩行用と乗用トラクタ用があり、乗用のものでロータリを2〜5連装備したものもあります。
○溝切機:溝を作り水はけを良くする作業機です。
○培土機:培土板で畝や畝間を耕し、除草し、作物の生育を良くする作業機です。
F.水管理用(水をくみ上げるポンプや散水かんがい用などの機械装置です。)
○ポンプ:水をくみ上げや排水に使われ、動力は電動機、エンジンなどがあります。
○スプリンクラ:散水かんがいに使用される機械装置で、水圧でノズルを自動的に回転しながら散水します。
○レインガン:散水かんがいに使用される機械装置で、散水部分がガンタイプになった散水器です。
G.防除用(作物の病害虫や雑草などの防除を行う機械装置です。)
○噴霧機:薬液をポンプで圧縮し、噴口から霧状にして作物などに散布する作業機です。
○散粉機:粉剤や粒剤を高速で回転する送風機の風で散布する作業機です。
○ミスト機:散粉機に専用の部品を取り付けて、薬液を散布できる作業機です。
○スピードスプレーヤ:
果樹園などの防除作業に使われており、機体後部に立て扇状にノズルが配列され、噴口から霧状に薬液を大風量ファンで広範囲に散布する作業機です。
○ブームスプレーヤ:畑作等で、トラクタが畝間走行できる場合は、走行しながら長く延びた複数のノズルから農薬を散布できる作業機です。
○土壌消毒機:薬液を土壌の中に注入し、病害虫を駆除するものと高圧蒸気による作業機があります。
3.収穫作業機(稲作、畑作、牧草などの収穫をする作業機です。)
A.稲麦収穫用(稲麦などを収穫するための機械です。)
○バインダ:稲を刈り取り、一定の稲束を結束ひもで自動的に束ね、放出しながら刈り取りする機械で稲束は、はざ架けするなどで、天日で、自然乾燥させます。刈り取りまでの作業で脱穀はしません。
○脱穀機・ハーベスタ:バインダ刈り取り、自然乾燥したものを脱穀し揉みにする作業機です。ハーベスタは、脱穀機をゴムクローラなどの走行部をつけ、圃場を自走できる機械です。
○コンバイン:
刈取りしながら脱穀をできる機械で、いろんな穀類(麦、大豆、そばなど)を収穫できる汎用コンバインもあります。
B.畑作物収穫用(畑作用収穫機ですが、次の収穫機械以外に根菜類、葉菜類の収穫機もあります。)
○ポテトディガ:馬鈴しょ掘取機でトラクタに取付けられ、掘取りながら土をふるい後方に落としていく作業機です。
○ポテトハーベスタ:馬鈴しょ収穫機で、掘取りしながら茎葉、土を振り分け後方の荷台に積み込む作業機です。
○トレンチャ:トレンチャは、比較的深くて狭い溝掘りに使用され、ごぼうなどを掘り起こすのに使われています。
C.牧草・飼料作物収穫用(牧草や飼料用作物を収穫する作業機です)
○モーア:牧草の刈取り使用される作業機で、往復運動する刈り刃によって刈取るレシプロ、水平回転刃のロータリ、垂直回転刃のフレールの3種類に大別されます。
○ヘイレーキ・ヘイテッダ:刈取られた牧草の反転・拡散・集草などを行い牧草の乾燥促進をする作業機です。
○ヘイベーラ:ヘイベーラは、圃場で乾燥調製した牧草をレーキで集草列にした牧草を拾い上げながら圧縮梱包(ベール)を行い、後方に放出していく作業機です。
○ヘイコンディショナ:モーアで刈取った牧草を拾い上げ、回転するロールで挟み砕き、牧草の乾燥を早め、良質な牧草を作る作業機です。
○フォーレージハーベスタ:牧草、飼料作物の刈取り又は拾い上げをして細断・吹上・積み込みを行う作業機です。飼料作物をサイレージ材料として収穫する場合に使用されるが、青刈り直接給餌用にも使用されます。
○ロールベーラ:牧草地で円筒形になったものを目にすることがあると思いますが、ピックアップした牧草をロール状に圧縮しトワイン(ひも)などで結束し、梱包する作業機です。
○ベールラッパ:ロールベーラでベールした牧草をビニールフイルムでラッピングし、そのままサイレージすることのできる作業機です。
4.乾燥・調製・加工作業用(穀物の乾燥・もみすり・精米・粉を挽くなどの作業機です。)
A.乾燥機(稲を一定の水分に乾燥する・麦などを収穫するための機械です。)
○乾燥機:コンバインで収穫した高水分のもみを乾燥機に入れ、穀物を乾燥機の中で移動させながらバーナと送風機により熱風を作り乾燥させる機械です。
○ライスセンタ:乾燥機を複数設置し、乾燥からもみすり玄米出荷まで行う施設です。
○カントリーエレベータ:共同施設のものが多く、もみ貯蔵サイロを持ち、乾燥、もみすり、出荷施まで行う大型施設です。
B.調製用(もみを一定の水分に乾燥させたり、野菜を洗浄したり根を切り詰めて長さを揃えたりする作業機です 。)
○もみすり機:乾燥したもみをもみ殻と玄米に分離する機械で、摩擦式(ロール式)と衝撃式(インペラ式)があります。
○選別機:農産物の品質を一定にする選別を行う作業機です。(米の大きさを選別するのに米選機があります。)
○野菜洗浄機:ブラシと水で根菜類などを洗浄する機械です。
○野菜結束包装機:物流や店頭で取扱いやすいよう結束や包装をする機械です。
C.穀物用加工用(精米や製粉などの機械です。)
○精米機:精米とは玄米表皮のぬか(糠)と胚芽を取り除いて白米にする機械です。
○精麦機:麦の外皮を取り除く機械です。
○製粉機:穀物を粉にする機械です。最近では米粉パンを作る製粉機も生産されています。
5.養畜作業用(畜産関連の機械です。)
A.飼料調製用(飼料用作物を細断したり、混ぜたりして調整・加工する作業機です。)
○カッタ:飼料用作物を細断する機械です。
○フィードグラインダ:とうもろこし・大豆・麦類を粉砕する飼料粉砕機です。
○飼料配合機:粗飼料、濃厚飼料にふすま類、大豆かすなどを混合する機械です。
B.給餌・給水用(餌や水を与える装置です。給餌装置、ウォータカップ、サイレージ取出し機などの装置があります。)
C.畜舎清掃用(畜舎内の糞尿処理や消毒などの装置です。畜舎内の糞尿を集めるバーンクリーナや蒸気消毒機などがあります。)
D.乳牛、鶏卵用(搾乳機などの機械です。ミルカ、バルククーラ、育すう機、洗卵機などがあります。)
6.その他農作業用(トレーラ、農用運搬車などがあります。)
A.運搬用(トレーラ、農用運搬車、フォークリフト、ベルトコンベアなどがあります。)
B.その他(穴掘機、チェンソーなどがあります。)
さらに、農業機械には「稲作・畑作・果樹作・野菜作」などのように作目に応じて、また作業能力や大きさに応じて、さらに専用機や汎用機などの種類もあり、各種各様の機種・種類がありますので、詳細については、農業機械メーカーのホームページを利用したり、農業機械販売店に相談することをお奨めします。
4.家庭園芸でも活用される農業機械
機械の選定と利用は慎重に
健康的なレジャーとして、家庭菜園だけではなくガーデニングに関心が持たれ、家庭園芸が盛んになるとともに、小規模な農家が利用している中耕管理機・刈払機・噴霧機など軽量小型の農業機械が家庭園芸用にも利用されるようになってきました。人力作業に比較して能率もあがり、作業精度(できばえ)もよくなり、より一層の楽しいレジャータイムを期待することができるようになりました。
中耕管理機は軽量小型の歩行用トラクタであり、動力カルチまたはティラーともいわれます。ロータといわれる作業機を車輪の代わりに車軸に取り付け、ハンドルの持ち具合でロータを駆動させて、耕うんや砕土均平(地ならし)をし、中耕用ロータによってうね間の中耕除草もできます。作業の内容によってロータの種類を替えることも必要であり、取り扱いは比較的簡単ですが、小さいエンジンなので、行おうとする作業規模とのバランスには注意が必要です。
刈払機は草刈機ともいわれ、道路や公園の除草管理などにもよく利用されています。金属製の回転刃(刈刃ともいう)は、性能は良いのですが非常に危険ですので、石などの飛散が少ないナイロンコード刃の利用をお奨めします。農薬の噴霧機は、家庭園芸では動力用よりも人力用の背負いレバー式をお奨めします。レバーによって薬液タンク内に空気を蓄圧する方式の背負い式噴霧機は、小規模農家でも便利に利用されています。
これらの農業機械の選択と利用方法は、近くの農家に教わるのが無難ですが、農業機械販売店に相談するのもよいでしょう。そして、これらの動力機械は、楽しく安全に利用したいので、安全な農業機械の証票があるものから選び、相談しやすく整備技術で信頼できる農業機械販売店から購入するのが良いでしょう。
